僕が体験した「不思議な大阪」体験について
不思議な大阪
大阪は本当に変わっている。と思う。僕は半年だけ研修で住んでいた事があるけども、非常に貴重な体験をした。大阪の何が一番変わっているかと言えば、「人」だと思う。
「半年住んだだけで何が分かる!?」
そう思われた大阪の方がいらっしゃったのなら、それはごめんなさい。でも率直な気持ちを言っただけです。どうかご容赦下さい。
入社して関西地域配属になった僕は関西の同期が70人程いた。その中の69人は地元が関西、大学が関西など、何かしら関西に縁がある人がほとんどだった。僕だけが何の縁もない状態で関西配属になった。と言っても自分で関西配属を希望したのだが。
関西についてはテレビで知った知識しかなく、関西弁、たこ焼き、吉本くらいしか分からなかった。それなのに「関西配属を希望した人」という事がいつのまにか「関西が好きで好きでたまらないヤツ」に変換されてしまい、僕の事を凄く積極的に受け入れてくれた。
「関西人ってみんなオモロイって思ってるやろ?実はそんなことないねん、つまらん人間もたくさんおんねん、ガッハッハ」
→別に思ってなかった
「俺が全部案内したろか?真面目なとこからピンクな場所までぜーんぶ教えたる!」
→1人で行きたい
僕の性格が悪いだけで、めっちゃ喋りかけてくるし、何かと案内したがるし、とても優しい人が大勢いた。関西が好きって勘違いされて良かった。
僕は関西が好きで希望したのではなく、九州以外なら何処でも良かった。大学が九州だったので、九州から外に出てみたいと考えていて、会社の金で転勤しまくって、いろんな場所に住みたいと思っていただけ。東京は人が多すぎて怖いし、北海道は寒そう。すると後は名古屋か関西に絞られる。名古屋か関西かと言われると所属人数の枠が関西の方が多かったので、関西を第一希望にした。まぁ簡単に言うと消去法だ。それだけの事なのに「関西を一番好きでいてくれるヤツ」って思われた。なんか騙したみたいで、すまん。あ、でも嫌いって訳でもなかったよ、本当だよ。
関西の人はとにかくいろんな場所に連れて行ってくれた。通天閣、新世界、アポロビル(入店はしてない)、梅田らへんとか。ごはんもよく連れてってくれた。そこである事件が起こったのだ。「不思議な大阪」を体験したのだ。おそらくは関西以外ではこうはならないんじゃないかと思う。前振りが長くなったけど、是非最後まで読んで貰いたい。
大阪の居酒屋で起こったある事件
この日は研修が終わった週末。そのまま居酒屋で飲みに行くことになった。かなり大所帯で、30人くらいいたと記憶している。僕以外全員関西人の中、ウェイウェイやっていた。
そこの居酒屋さんは個室はなく、開けっぴろげでパーパーのお店。全て座敷で広さもかなりのもの。100席以上はあったと思う。それなのに、隣の席はかなり近く、知らない人でもすぐに話せる程。これも関西の人柄が関係しているのか?と1人考えていた。
しばらく経ち、みんなも酔いが回ってきた頃、
「キャーーー」
と同期の女子が悲鳴を上げた。
何事かと女子が指差した場所を見ると光沢のある大きめのGが壁を這っていた。
カサカサカサ
次の瞬間
「ドンッ!!」
同期の男子がスリッパでGを叩き潰した。
ここからが「大阪」の始まりである。
何やら同期のリーダー的な2人が話している。
リーダーA:「これ、安くしてもらおうや」
リーダーB:「せやな、いくらなんでもGはあかんやろ」
リーダーA:「そこのおねーちゃん!ちょっと来てー」
アルバイト:「どうしましたか?」
リーダーB:「いや、これ見てよ。(潰れたGをみせる)これかなんでー。責任者呼んでくれる?」
展開早っ!
ついさっきまで女子社員が悲鳴を上げてGを叩き潰したばかりだというのに、この店の落ち度とみるや即値下げ交渉に踏み切る。僕の人生でこの経験は未だかつてない。
しばらくすると和装の責任者が僕らの座敷の前まで来て
女将店長:「大変申し訳ございませんでした・・・」
と三つ指立てて深々と土下座したのだ。
しかも頭を上げない。土下座のままフリーズ。
交渉体制に入っていたリーダーの2人もこの土下座は予想できなかったのか、たじろいでいる。このシーンを見て、僕は内心
「大阪やなーーーー!!!」
と感動した。
少し説明しますね。この女将店長、値下げ交渉されると恐らく事前に分かっていたと思います。大阪という土地柄で鍛えられてきたのでしょう。そうでなければ相手の言い分も聞かず、来るやいなや、いきなり土下座するものでしょうか??
しかも、この開放的なお店の設計も手伝って、女性店長が土下座した瞬間、只事ではない感が出て店中のお客さん視線が僕らの方に集まったんです。
女将店長が土下座しているのに、値下げを迫る若造がいたらどうなるでしょう。おそらく店中のお客さんから非難轟々の嵐になるんではなかろうか(それも大阪の土地柄だと更に激しく)。そこまで見込んでこの女性店長は土下座したとしか考えられない!!
そこで僕は
「大阪やなーーー!!(2回目)」
と感動に包み込まれたわけです。
その後リーダーの2人はこの戦略的な土下座に成す術なく黙りこくった後に
「気ーつけーや」
と蚊の鳴くような声を絞り出しただけだった。
リーダー2人の完全な敗北。1円の値下げも叶わぬまま、Gが出た事実だけが残った。
いいものが見れた!!この出来事だけを取っても大阪に来て良かったと思えた。その地域でしか見ることが出来ない風景を僕は見た。素晴らしい体験が出来た。そして余韻冷めやらぬまま居酒屋を後にし、岐路に着いた。
翌日早起きしたので朝◯ックで昨日の記憶を辿って楽しんでいた時。
またもや事件が勃発!!
マジですよ!ウソじゃないですよ!
Gが出たんです!光沢のある大きめのGが!
昨日のやつとウリ2つ!!
これはどうするべきか!!
昨日の事を思い出せ、俺!
恐らく食品業界でGが出たという事実はあってはならない事だろう。しかも客席での出現は間違ってもあってはならない。昨日の事件を考えてもGの出現があれほど事を大きくしたのは一目瞭然である。お店としては穏便に済ませたいに決まっている。僕がすべき行動は何だ!?答えは1つだ。
そーとスタッフにGの存在を伝える
これしかない!朝早い時間だけど、お客さんは結構いる。他のお客さんには絶対にバレてはならない。
僕:「あ、すみません、そこにGがいますよ」
するとじっと僕の目を見た後、何も言わずにスタッフは裏に引っ込んだ。言葉はなくとも僕の言いたい事が伝わったようだ。よしよし、そうしてくれ。お互い認識は一緒だ。他のお客さんにバレないように音を立てる事無く速やかに逝かせてくれ。
すると袖まくりしたスタッフがデッカいゴキジェットとハエたたきを両手に携え
ブシャー、バシン!
バシン!ブシャー!
うぉいっ!!
お客さんみんな見てるよ!!
G見られてもいいの??
あと俺の気遣いは??
普段から馴れているのか、三発目くらいにクリーンヒットしてキッチンペーパーでくるんで 厨房に戻る姿はまるで業者の様だった。そしてお金を取っても良い程のスマイルで接客をこなすスタッフを逞しく思ったのと同時に「大阪、わけ分かんね~~」と思いましたとさ。
以上、僕の「不思議な大阪」体験でした。あ、この件で大阪が大好きになりました。本当だよ。