自由意志

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コンビニエンスな日々④ ~求人の取り組み~

 

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 ~続き~

 

 

副店長着任から一ヶ月が経った。 
正直この一ヶ月は記憶にない。
へとへとを通り越して気力だけが僕を支えていた。
その支えも今は辛うじて立っているだけで、いつ崩れ落ちてもおかしくなかった。
僕と店長で12時間交代でシフトカバーを行いながら隙間時間と残業で事務処理、数値管理と報告業務をこなす日々。
とりあえずお店を回すことで手一杯。
いや、今思えば回せていなかった。
売り場、バックヤードはボロボロ。売れ筋は欠品し、新商品が納品されても売り場を作れずにバックヤードで眠っているのがゴロゴロしている。
商品の値段表示もほとんどついておらず、お客さんが「これいくら?」とレジに商品を持ってくる事にはもう慣れた。
もう疲れ切っていた。
この一ヶ月の間、引っ越しの休みを一日もらえただけで他は全てシフトカバー。
もちろん店長も休みが必要なので、その日は全て自分でカバーの鬼シフト。
バイトがいればこんな事せずに済んだのに・・・。
なぜこんなにも人が来ないのか。
一ヶ月も経てばそれは明白だった。

 

シンプルに言うなら「働きたくない場所」と思われていた。
読者の方も経験があると思うが、アルバイトに応募する人は90%以上の人は下見に行く。
コンビニは特に「近場で働きたい」人が応募する為、この傾向が強く出る。
つまり、ウチの様な売り場が汚く、バイト生も少ない、疲労困憊の店長か副店長が常に売り場に立っていると、空気も殺伐として雰囲気が悪くなり、下見に来た人はその時点でウチの店を却下するのだ。
掃除も行き届いておらず、カウンター回りとトイレは特に汚い。
誰がこんな店で働きたいと思うのだろうか。
僕はそう考えた。

実はもう一つ問題があった。
薄々気付いていたのだけども、店長はこの問題を改善しようとしていない。
こんな状況に対しても何も手を打とうとはしていないのだ。
それはシフト状況だけではなく、数字にも表れていた。
ウチのお店は確かにバイトは全くいないが、その事が数字に対する言い訳にはならないのがこのコンビニエンスの会社。
ウチのお店の成績はダントツの最下位。

「このお店はバイトがいないから仕方ないよね」

は1mmも通用しない。
バイト生を募集し、育成し、戦力として整える事も店舗経営者の能力なのだ。
そう、ウチのお店はお客様に対しても、会社に対してもお荷物なのだ。
こんな状況だから接客も良いはずがない。
実際に客数も減り始めている。
全てがリンクし、負のスパイラルに陥っていた。
店長はそこで勘違いをしていた。
「俺めっちゃ働いている」感が満載なのだ。
シフトカバーをすると労働時間は激増するし、体力的にも消耗する。
だから
「やった」感が出るのだ。
ここを勘違いする人間の多いこと。
コンビニエンスな本部直営店のやるべきことはシフトカバーではなく、現場で学び、成功事例を生み、店舗の数値改善してSVになり、オーナーさんを良い方向に導く事だ。
こんなシフトカバー、何の意味もない。
僕は生意気にも「この店長についていったら潰れる」と恐怖した。
そしてこの状況を変えよう!とこの時決意した。

 

 

まず僕が取り組んだ事が初心に帰って「バイト募集」だった。
誰も来ないって言ってたじゃん?っていうツッコミは少し待って欲しい。
確かに先ほど述べたように、下見に来てみんな応募を取りやめるのはあるが、そうは言っても来てもらわないと始まらないのも事実。
だから募集に一工夫凝らしてみた。
今までタウンワークに任せっきりになっていたバイト募集を一旦止め、自分でチラシを作製して撒く事にした。
無機質に羅列された求人広告は効率は良いけど、比較対象があり、内容よりも条件が良い方に流れやすい。
コンビニエンスはそこで勝負しても結局勝てない。(簡単に時給は上げられない)
従って、ここは手書きで作ったチラシを近隣団地、アパートに撒くことにしたのだ。名付けて

「手作り感満載のチラシがポストに入っていれば、一回応募してくれるんじゃないか作戦」(そのままかい!)

 

シフトカバーが終わってやっと作業に取り掛かり、完成した時は日付が変わって2時間程が過ぎていた。
手作り感満載の募集チラシ。少し満載すぎたかもしれん。でもいいや。
そのチラシを後日大量コピー、カットして1000枚になった。
あとは配布するのみだ!
応募があるのかないのか、もしかしたらこの努力は無に帰す可能性も大いにある。
しかし、この状況を打開しなければ、未来はない。
絶対このお店を良くするぞ!!
その一心で体は疲労困憊ながらも気持ちだけは燃えていた。

 

そこで水を差すかのようにアゴの長い店長から

「そんな事しても無駄だって」

との一言。
うるせぇ、テメーは黙ってろ。口にはしていないが、内心そう思っていた。
もうアゴの事は無視して自分なりにやってやる。
半ば自暴自棄ながらも、新人バイト生が来ることを夢見て岐路に着いた。