元コンビニマンの戯言 凄い店員の話
遠い昔、僕はコンビニで労働していた。店長もやった。
マネージャー的なものもやった。
SVもやった。
だからこそ分かる、お店の苦労や楽しみ、組織の難しさ等、何故か分からないが少しずつ解放していきたい衝動に駆られた。
「誰かの参考になれば」との思いは1mmもない。
僕の取るに足らない経験が誰かの参考になるはずもないし、コンビニは同じ看板でも、他店となればやり方が全く異なるので、知ってる風にすると痛い目に合う。
それを僕はよく知っている。
じゃあなぜ書くのか?
それは「書きたい」から。解放したいから。それだけ。
最近は初心を忘れていた。
ブログを開いてもアクセス解析が気になったり、ツイッターでも「いいね」とかフォローされた事に一喜一憂したり。
特にブログ、ツイート自体も周りが良い反応をしてくれそうな事に限定して発言していた。
こんなんじゃダメだ。自分の思った事、好きな事を自由に発言したい、その様な空間を求めたから「自由意志」という名前にしたのに。
これからは初心に返ってブログ活動に取り組もう、そうしよう。
(ただ、読者の方々に分かりやすい内容を提供するのは言うまでもない。)
こんな自己中心的な僕のブログを読んでくれる人がいるのであれば、
幸せの一言だ!
脱線してしまった。話を戻そう。
コンビニで働くとアルバイトの入れ替わりが激しい。
ざっくりだが、1店舗当たりのアルバイトの人数は平均で15~20人だろう。
コンビニの現場は余剰に雇える程の余裕はないので、常に人員はカツカツだ。
1人でも辞めたらパニック。シフト戦争勃発、店長からは「シフト入って」の鬼電が入るのだ。
そんなことだから、ちょっとくらい変な奴でも採用してしまうのはしょうがない。
そして今回はその変な奴が起こした出来事を紹介したい。
その名も「吉田君(仮名)17歳」だ!
吉田君は申し訳ないが、普段接していても学がないのがありありとしていた。
多少チャラチャラしていたが、そんな事が霞むくらいの中身の持ち主だ。
面接にヘアピンしてスーパーサイヤ人のヘアスタイル。履歴書は空白だらけ。
普段なら即不採用だが、この時のシフトが壊滅状態だった為、世直しと思って採用したのだ。
そんな吉田君、よくお客さんに怒られていた。俺がお客さんでも怒る。
仕事に関わる事なら手取り足取り教えるのが僕のやり方。
しかし吉田君はそんな一線を軽々しく越えてくる。
例えばこんな事があった。
お客さん:官製はがき下さい。
吉田君:かんせいはがき、、、ですか?
お客さん:はい、官製はがき下さい。
吉田君:すみません。その「完成したはがき」ってここに売っているのでしょうか?
お客さんは怒るというか鼻で笑って、他のバイトに代われと言われ吉田君はバトンタッチされていた。
同じシフトの相方のバイト生は笑いをこらえるのに必死だった。
ってか顔を真っ赤にして噴き出しながらレジしてた。
お気づきだと思うが、彼は官製はがきを「完成されたはがき」だと誤解していたようだ。
確かに聞きなれない言葉かもしれないが、昔の名残で「官製はがき」を用いる方はまだまだいる。
ただ、普通のはがきの事だ。それくらいコンビニ店員は知っていて当たり前だが。
例え知らなくても「完成されたはがき」と解釈する吉田君はさすがだ。
当時は説教部屋行きだったが。
しかもウチのコンビニに売っているのかお客さんに聞く始末。
こういう事もあった。
お客さんが350mlのビールを持って吉田君が待つレジにやってきた。
お客さん:これの500mlのビールある?350mlじゃなくて。
吉田君:え?350じゃなくて500、、、ですか?
お客さん:そう、500mlが欲しいんだけど、ない?
数秒の沈黙・・・。
吉田君:すみません、僕にはお客さんの言ってる事がさっぱり分かりません。
これ思い出しただけでも笑ってしまう出来事だったのだが、その後お客さんがめっちゃキレて僕が謝った。
馬鹿にされたと思ったようだ。
そりゃそうだろう。
「僕にはお客さんの言ってる事がさっぱり分かりません。」
と言われて良い気がする人いないだろう。
ビールの500mlが欲しかっただけなのに、
「あんた何言ってんの?」
と言われたようなもんだから。
そういう事が本当に多い吉田君。学はないが、憎めないヤツで安心は出来ないがシフトにはたくさん入ってくれた。
たくさん失敗してたくさん怒られていた。
後輩のバイトにも年下の高校生にも怒られていた。
肉まんの廃棄時間を守らずに怒られ、
先入先出をせず、怒られ、
無断欠勤して怒られ、
引継ぎノートの字が汚すぎて怒られ。
そんな彼、1年くらい続いたけども「出来ちゃった」のが理由で辞めた。
子供が産まれるから稼がないといけないのが理由だ。
ツッコミどころが200を超えたが、その言葉を飲み込み、「おめでとう」とだけ言って送り出した。
あいつは今も元気でやっているのだろうか。
もう会う事はないだろうが、吉田君を思い出すとふと心が軽くなる。
あんなに仕事が出来ないのに愛されるヤツもいないだろう。
空気が思い時に吉田君が出勤するだけで、場の空気が良くなる。
そういうやヤツって貴重だよなと思う。
今いる場所が、その持ち前の愛嬌(?)が生かされる事を願うばかりだ。