自由意志

日常のささやかな出来事を少しだけ面白く表現したい

雪から学んだこと    ~3000文字チャレンジ~

遅ればせながら参戦しました。3000文字チャレンジ!!
それではどうぞ。 

 

 

僕の故郷は日本の中でもだいぶ南の方に位置し、それ故あまり雪が降らない。
ってか雪降らない。そんな沖縄という場所です。
12月でも日中は半袖、エアコン当たり前。
マフラーの巻き方知らない。スタッドレスタイヤ知らない。
とにかく寒くない。雪と馴染みなく育ちました、どうも僕です。
沖縄は暑いイメージがあるけども、実は真夏は内地の方が暑いんだよね。
沖縄の暑さの真骨頂は「冬」。
12月の頭に実家に帰省した時は海で泳いでました。
※海水浴の写真を載せたいところですが、今回は3000文字チャレンジのルールに則り割愛。
18歳までは沖縄で生活しており、雪と接する事は皆無。見たこともなかった。
若かりし頃の雪の印象は「寒そう」だった。
もちろん、ニュースでは初雪だ寒波だ雪かきだと映像では連日見る事にはなるが、そこはもう自分とは一切関係のない世界が広がっているだけ。
半袖で過ごし、エアコン稼働させていながら雪景色もクソもないのである。
もちろん、見てみたいし感じたいという思いはあった。
旅行で雪を見たという人は羨ましいと思った。
小学校の頃、雪を見たことのない沖縄の人に向けて、豪雪地域の方が親切に雪を箱に詰めてクール宅急便で送ってきてくれる事があった。
冷たい地域の暖かい心意気だ。その行動が胸を打ちますね。
でも、申し訳ないけども、箱に詰める時はフワフワなんだろうけども、沖縄に届く頃にはガッチガチになっていて、クラス全員で
「う、う~ん」
てなっちゃうんだよね。そんなこんなで雪と接したのは産まれて18年の間、それ1回のみ。
皮膚感覚として、雪と接する事はなかった。
僕の中で「雪」とは憧れの対象であり、遠い存在だった。
そんな雪を思い返してみたい。

 

 

 

始めて雪を見た時は大学進学で名古屋に出た時だ。
部屋で1人、沖縄生活が長かった僕としては異次元の寒さに体を震わせていたところ、窓の向こうに白いものがチラついたのが見えた。
これが僕の雪との出会い。
TVで描かれる様な、カップルとデートしている時に初雪に出会うロマンティックさは欠片もない。
あまりの寒さに凍えて縮こまっていた為か、雪との初対面は特に思い出に残らなかった。

 

しかし、翌日玄関を開けるや白銀の景色が眼前に飛び込んできたのだ!
これには僕は驚いた!!なんだこれは!?
あのTVで観ていた映像が、リアルな体感としてこの時初めて接した。
気が付くと僕はそのままアパートを飛び出していた。
ザクザクという足音、その音を楽しんだ後、振り返るとそこには産まれて初めてつけた白い足跡。
写真を撮り、雪ダルマを作り、思いつく限りの事をやってみた。
まるで18年分の雪体験を取り戻すかのように時が経つのも忘れて没頭した。
それほど僕にとっての初めての雪は衝撃的なものであった。
不思議と寒さは感じなかった。
楽しくてしょうがない、雪ってこんなにスバラシイんだ!
とワクワクが止まらず、僕は終日雪に夢中、雪の虜になっていったのだ。

 

 

雪を食べ、雪で滑り、雪を投げた。
ビールを雪に埋めて冷やした。
雪山を作り、お湯をかけてみた。
雪で顔を作った。
木を揺らして雪を落とした。
雪に顔を埋めた。
ミニかまくらを作った。

 

 

恐らく、周りの人は奇異な目で僕を見ていたことだろう。
そんな事は関係ない。
雪と接したい。
雪と暮らしたい。
雪と共に過ごしたい。
雪に抱かれたい。
そんな思いだった。

 

 

しかし、翌日僕は目の前の出来事がにわかに信じられなかった。
昨日までの白銀の世界が一変、いつもの平凡な景色が目の前に現れた。
平凡な道路、平凡な屋根、平凡な足音。
そこには無味乾燥な茶色い一面が広がっていたのだ。
昨日は夢だったのだろうか。
あの見渡す限りの雪景色が一夜にしてなくなっていたのだ。
何が起こったのだ。 
そう、1日雪と過ごした程度で僕は分かったつもりになっていた。
 雪は溶けるのもの。
今でこそ分かるけども、積もっていた雪も次の日には溶けてなくなる。
朝積もっていた雪も場合によっては昼には全て溶ける。
しかし僕には雪の経験がなく、雪は積もると春先までそこにあると勘違いをしていたのだった。 
そして僕は学んだ。
楽しかった、素晴らしかった出来事は、突如空間を遮断する様に無くなるという事を。今生きている幸せな日々も、いつか突然に無くなってしまうかもしれない。
だから今を一生懸命生きよう!大切に過ごそう!
僕は雪からそう学んだ。

 

 

それから時は経ち・・・
雪にも馴れ、気持ちは落ち着いてきた頃、心境は変化してきた。
雪から学んだとか言いながら最近は

 

 

もう雪はいいかな~~

 

 

と考えるようになってきた。
あんなにも抱かれたがっていたのに。 
人間学ばないものである。
理由は主に下の通りだ。

・スタッドレスタイヤに履き替えるの面倒くさい

・渋滞面倒くさい

・車内が凍える程寒い

・たまに水が出なくなる

・つるつる滑る

・電気代とガス代上がる

あと何より寒い。

もう面倒くさいし寒いしで大変である。
雪予報にうんざりする。
寒波嫌い。
実はこのブログを書いている前日、朝窓を開けるとあの時と同じ世界が広がっていた。
ただ1つ違った点は僕の心の声だ。

 

【初めての雪との出会い】

 産まれて初めての白銀の景色。
それはパンフレットの写真がそのまま飛び出してきたかの様な美しく壮大な世界。
雪化粧した木々にそれらを照り付ける太陽のコントラストが何とも言えず地球の雄大
を物語っていた。
小鳥のさえずりさえも神の啓示を受けて、命を全うしていると脳に直接語りかけてくる。

 

【昨日の雪との出会い】

メンドクセェェェーー 

 

 

人間とは所詮この程度である。
もしかするとこれは僕だけかもしれない。
でも実際に僕が感じているのだから仕方がない。
今僕が雪に対して感じているのは
「メンドクセェ」
の一言。
スタッドレスにはしていないからタイヤにチェーンを撒き、低速で走り、明日にはまた外さなければならないと考えるだけでゾッとする面倒くささだ。
自然の摂理は残酷だ。
雪に感動し、雪に泣く。
あれほど抱かれたいと思っていた相手を今は足蹴にしたい気分だ。
ベッドインした相手をホテル出る時には冷たくあしらう、そんな男にだけはなりたくなかったが・・・。
これは僕が悪いのか。
否!
誰も悪くない。
強いて言うならば、雪への期待が膨らみ過ぎていた事、幼少期に雪を体験していなかった事が悪いのかもしれない。
これは初心に返るべきだ。そう考えた僕は、勇気を出して外に出て、雪と戯れた。
初めて雪と出会った当時を思い出しながら雪を食べ、雪ダルマを作り、雪を投げ合ってみた。
全て1人で実行した当時とは違い、今回は幼い子供と一緒になってやった。

 

イイ!

楽しい!

 

雪がだんだんと僕に近づいてきた。
時間が経つにつれ僕と雪の距離が詰まってきた。
この感覚、久しぶりだ!
そうか!これ、この感覚だ!
今分かったぞ!
雪が離れていったのではなく、僕が離れていったのか!
最初から雪はそこにいたのだ!
良いところにはフタをして悪いところだけが頭に浮かぶ。
いつの間にかそうなっていた。
確かに面倒くさい部分はたくさんある。
日常の生活を送るのには支障もきたす。
しかし、それと同時に子供たちの心を育み、感情を豊かにする雪。
それら全てが雪なのだ。メリットデメリットではないのだ!!
曇っていた目が今スッキリと晴れ渡る空のようにハッキリと見える気がした。

 

 

 

やっぱり僕は雪が好きだ!